Simutrans OTRP JR西日本再現プロジェクト
この記事は、Simutrans Advent Calendar 2020 21日目の記事として執筆されました。
Simutrans Advent Calendar 2020
https://adventar.org/calendars/5472
筆者は、Simutrans OTRPでJR西日本近畿エリア(日中ダイヤ)を再現しようとしている、浪人生です。Simutransの合間に受験勉強をしています。筆者は、真っ平らで何もないマップに、JR西日本近畿エリアの配線を引いて、適当な街を建設し、緻密なダイヤを作成する形で、Simutrans OTRPをプレイしています。Twitterアカウントはこちら:https://twitter.com/kezaworm
Simutrans OTRPでは、ある程度複雑なパターンダイヤを組めるようになりました。この記事では、ダイヤを組むためのテクニックを少し紹介した後、実際の再現動画を掲載しています。
Ⅰ. Simutrans OTRPでのダイヤの組み方
Simutrans OTRPでは、1ヶ月に何本列車を発車させるかを決めて、その本数で1ヶ月に対応する時間(OTRPでの初期値は1440、筆者の環境では3600に設定)を割った値が、パターンダイヤの1サイクルとなります。具体的なダイヤの組み方は、ひめし氏のブログで丁寧に解説されていますので、ここでは省略します。
OTRPのスケジュール機能を使いこなそう - himeshi's blog
Ⅱ. 現実路線再現時の現実時間とゲーム内時間の対応
Simutrans OTRPで、プレーヤーが決めた1サイクルと、現実時間をどう対応させればいいでしょうか。プレーヤーの設定により、1ヶ月の長さ(bits_per_month)が異なるため、一概にここで提示することは極めて困難です。そのため、各自で実験して決めていただくほかありません。
実際にSimutransで適当な電車を走らせてみましょう。221系8両編成くらいがちょうど良いと思います。現実世界の棒線駅では、短くても2分間隔が限界です。Simutransにおいても、この221系をたくさん走らせて、1つの棒線駅で処理できる最小のゲーム内時間を、現実世界の2分に対応させることにしましょう。すると、現実路線を再現する際、優等列車の普通列車への追いつき具合が丁度良くなります。具体的に考えると、JR神戸線下りにおいて、芦屋駅でT電(快速)に追い抜かれた西明石行C電(普通)が、終着の西明石駅まで後続のT電から逃げ切れるようになります。筆者は、現実世界の2分を、ゲーム内の6単位時間に対応させています。すなわち、ゲーム内の1単位時間は、現実世界の20秒に相当します。(筆者の環境:bits_per_month = 23, spacing_shift_divisor = 3600)
Ⅲ. ルートコストの調整
米原駅から加古川駅へ向かうある旅客を想定しましょう。一般的に考えると、T電(快速区間:高槻-明石)を使わず、新快速で向かうと思われます。しかし、Simutransでは、場合によっては、T電を使ってしまいます。これは不自然な旅客流動で、変な混雑を誘発してしまいます。この問題を対処するために、適当な駅で「全員降車機能」を発動させて、ルートコストを増やします。全員降車機能については、Reti_N氏のブログで丁寧に解説されていますので、この記事での説明は省略します。
全員降車機能の話と、発生する旅客はちゃんと捌きましょうの会[Simutrans]: RetiのN35°
Ⅳ. 新幹線
京都-高槻間を考えることにしましょう。この区間は、現実世界の日中、毎時4本の12両新快速と、毎時4本の6両T電しか走っていません(8両以上のT電も走っていますが、6両T電が連続する時間帯もあるので、ここは6両で考えます)。これでは、京都−高槻の輸送が間に合いません。そこで、私のマップでは、C電のうち片方を京都まで延長しました。これで毎時4本の7両C電が追加された形になります。しかし、それでも足りなくなります。そのような場合は、新幹線を建設してみましょう。筆者のマップでは、京都-姫路間に新幹線が通されています。新幹線を高頻度運行することで、在来線の輸送力逼迫は回避できます。
Ⅴ. 余裕時分と停車時間の確保
在来線における停車時間は、乗降の少ない駅では20~30秒、多い駅では40~180秒が一般的です。また、ダイヤには、雨が降った場合や、運転士の技量が足りなかった場合などに備えて、余裕時分が設けられています。Simutransにおいても、この余裕時分は必要であると考えます。Simutransでは、1駅ごとにOTRPの定時発車機能を設定する必要はありませんが、拠点駅や待避駅では積極的に定時発車機能を設定するべきです。
具体的な例を挙げると、T電では、223系と221系が同じ所要時間で走っています。こまめに定時発車機能を設定しなければ、223系と221系では、加速性能が違うため、パターンダイヤが崩れ、223系だけ先行のC電に追いついてしまったりします。この記事の最後に掲載する実際の再現動画では、網干-野洲のT電に対して、網干・姫路・加古川・西明石・明石・須磨・三ノ宮・芦屋・西宮・尼崎・大阪・高槻・長岡京・京都・大津・南草津・草津・野洲で定時発車機能を設定しています。
Ⅵ. 運転系統の整理
新快速を例に挙げて考えたいと思います。新快速の運転系統は、次に示す通りです:
A…近江塩津-米原-姫路
B…野洲-姫路
C…長浜-米原-姫路
D…敦賀-湖西線-姫路
ここで、緻密なダイヤを組む上での増解結の話をしようと思います。米原以北、近江今津以北において4両編成での運用を行うためには、増解結もしくは系統分断のどちらかを選択することになります。筆者は、現在のところ、系統分断を選択しています。なぜなら増解結を行っていると、輸送障害時、増結に失敗し、4両のまま大阪駅に突っ込んでくる可能性があるからです。このようなリスクを避けるためには、増解結を行う駅に巨大な車両基地を設けて、何本もの8両編成を準備する必要があります。また、増解結をすると極端に加速度が落ちるというバグが存在したからです(筆者が増解結か系統分断か選択した当時;現在は直っているかもしれませんが、確認していません)。いずれにしろ、増解結と緻密なダイヤ作成の相性はあまり良くありません。Simutrans本体もバグが多いので、なるべく安定性のあるダイヤ設計が求められます。以上の理由により、運転系統を次に示すように整理します:
A・C…米原-姫路
B…野洲-姫路
D…近江今津-湖西線-姫路
A'…近江塩津-米原
C'…長浜-米原
D'…敦賀-近江今津
ここで、注意が必要なのですが、野洲から来た新快速Bを、姫路駅で湖西新快速Dとして折り返してはいけません。新快速Bは新快速Bとして折り返さないと、スケジュール設定が大変になります。なるべくスケジュールは単純化しましょう。
Ⅶ. ダイヤ設定
この節は、息抜きとして少し簡単な話に変えましょう。1つの運転系統は、何種類かの車種で担当することが多いでしょう。例えば、野洲-網干のT電は、221系、223系1000番台(4連・8連)、223系2000番台(4連・6連・8連・3000番台組込4連)、223系6000番台(4連)、225系で運用されています。このT電の定時発車機能を設定するときは、いちばん性能の低い221系に合わせてやる必要があります。ダイヤ設定の際はこの点をしっかりと考慮しましょう。
Ⅷ. ホームの向き
Simutransのダイヤを組み立てる上で、優先順位は高くないけれども意識しておくべきなのはホームの向きです。全部両側ホームにしておけば良いと思っていた時期は筆者にもありました。しかし、これをきっちり再現することで、優等列車と緩行列車の同一ホーム接続がきれいに決まって、ダイヤの再現度が上がります。たとえば、尼崎駅では本線T電と福知山線・東西線の快速列車がぴったり接続しますし、芦屋駅では新快速とC電(京都-須磨)、T電とC電(松井山手-大久保)がぴったり接続します。(現行のダイヤでは、芦屋駅での新快速とC電の接続はありませんが、利便性を高めるため、ダイヤを歪めて接続させました)
Ⅸ. ダイヤのアレンジ
どうしても旅客流動を調整できないときや、サービスを向上させたくなったとき、駅の配線の都合が悪かったときは、自由にダイヤをアレンジすることもできます。筆者が行ったアレンジは次に示す通りです:
・C電(松井山手-西明石)の大久保延長:来春から大久保駅にらくラクはりまが停車するというニュースを聞いて、過去にあったらしいC電の大久保延長を再現しました。ただし、この記事の末尾に掲載する動画は、この大久保延長を実装する前に収録されたものです。
・片町線の区間快速化中止:木津での大和路快速の接続が悪くなるので区間快速は廃止しました。
・大阪環状線天王寺-桜島線桜島直通列車設定:日中は無いそうですが、気分的に運転したくなりました。
・新快速の英賀保折返し:運転系統の整理のため。姫路-英賀保間は回送
・阪和線の関空・紀州路快速の独立運転:増解結を避け、8両編成を30分間隔で交互に運行することになりました。
・福知山線 丹波路快速を毎時2本、快速(新三田-(各停)-川西池田-(快速)-松井山手-(各停)-同志社前/木津)、C電(宝塚-高槻)に再編
・片町線 京橋-四條畷に区間普通設定(放出で快速待避):片町線は夕ラッシュダイヤを再現したくなったため。
・おおさか東線 225系0番台での運行:201系6連の性能では、接続の良いダイヤが組めなかったため。
Ⅹ. 再現動画
・Simutrans OTRP JR西日本再現 [A]快速B 網干→野洲
今まで何度も説明に用いてきた網干-野洲のT電を収録しました。1080P・倍速で見ることをおすすめします。緻密なダイヤ作成を頑張って、さまざまな列車と接続をとりあう姿をぜひじっくりご覧ください。
・Simutrans OTRP JR西日本再現 定点観測 尼崎駅
今度は、尼崎駅を1時間分上から定点観測した動画です。各方面から来た列車が接続をとりあいながら発車していく姿が見どころです。収録技術を習得している途中での制作のため、1080Pではご覧いただけません。ご了承ください。
Ⅺ. あとがき
動画で紹介した路線・系統以外にも、すでにさまざまな路線の再現が進んでおり、また未再現の路線の再現計画もあり、収録の準備を進めているところですが、受験生のため、ほどほどに控えさせていただきます。再現や収録ができ次第、新たな記事を執筆し、またこの記事に追記させていただきます。
Simutransをプレイするにあたって、アドオンやOTRP、ゲーム本体など、様々な方の制作物を利用させていただいております。筆者は、まだプレーヤーの域にとどまり、クリエイターにはなれずにいますが、クリエイターの皆さんに大変お世話になっております。ここで感謝を申し上げたいと思います。
さて、来年も皆様のSimutrans開発が進捗するようお祈りいたします。お読みいただきありがとうございました。何かコメントやご意見がございましたら、筆者のTwitter (https://twitter.com/kezaworm)まで気軽にお寄せください。また、ご自由にフォロー・リプライをしていただいて結構です。